隠者は菓子を与え続ける

何の因果か職場の隣の席がオタクなお兄さんなんですよ。まぁ頼まれてもないのにブログのトップ絵こんなな俺が言うのも非常におこがましい話だけれども、オタクなんだよ実際。どういうオタクかというと、オタ趣味以外にかける金なんぞ持たんっつうハードコアなオタクで、食い物の話で盛り上がってるときに「そんなに飯に金かけられないですよ。来週には○○のナンタラが出るから…」云々、よくわからない割り込み方をするタイプで。
で、どういう価値基準からか知らないけど俺を同族の末席に加えてくれたらしく、いきなり「あすか120%のさ〜」とか挨拶もそこそこにカマしてくる。俺はその辺ソフィスティケイテッド且つシビライズドなシティボーイだから「そんなことよりレディオヘッドの新譜、あいつをどう思う?」みたいに即話の腰を粉砕するのが日課。でもまぁそうは言っても別にそんなに嫌じゃないんですけどもね。つか俺席端っこだから隣その人しかいねぇし、呉越同舟でやっておるわけでしてね。
まぁこっからが本題なんだけれども、何か最近その人、俺に飴くれんの。食費を極限まで切り詰めて、贅沢を蛇蝎の如く嫌う男が、飴持ってきてんの、飴ちゃん。しかも庭にある蜂の巣から蜜を抽出して作りました!とかそういうマジカルなもんじゃなくて、ちゃんとした市販の。それを俺にくれるの。最近はもうほぼ毎日のペース。
もちろん俺にくれるだけじゃなくて彼はちゃんと自分でもナメナメしてはいる。でも不思議なことに俺以外に分け与えているのを見た例しがないのよ。周りも当然もう大人なんだから「飴頂戴」とは言ってこないし。それでも大抵の場合、昼休み前になるとバックをゴソゴソやりはじめ、「飴、食います?」と俺に言ってくる。例え無償の善意であれ必ず何か裏があるもの、と言い聞かされて育った俺ですから最初のうちはこの行為を相当に訝しんでいたけども、飴は甘くてとても美味しいのでもらい続けた。
もらえる飴は大抵が柑橘系ののど飴なんだけど、たまにストロベリー味なんかもあるから油断できない。のど飴はスティック状のやつで、ストロベリーとか甘いやつはスナック菓子とかのああいう袋に入ってるからゴソゴソ取り出すときに音で判る。合成繊維特有のパリパリした音がしたら当たりの日なワケで音聴いたら唾液が出るわな。そんなキャンディライフの中でもコーヒー味は今まで一度しかくれたことがない超激レアキャンディ、のど飴の申し訳程度の味気に慣れきった俺をあざ笑うかのようなビター且つスイートな大人テイストは後にも先にもあの日以来お目にかかってない。俺も大人だからこれから先も余程の事がない限り貰えまいと半場諦めてはいる。因みに今日はのど飴だったよ。