2月19日

眼下に不気味に伸びる螺旋階段の麓は不自然なほど禍々しい漆黒に飲み込まれている。事実この階段は呪われているのだと隣にいる俺の妹に言われ、ただただ肝を冷やすばかりだが、どうやら俺は階段を下らねばならないらしい。
下る前に妹からルールを告げられる。「3歩階段を下る毎に大声で『い、の、ち』と叫ぶ事」さもなくば途端に血まみれの柴咲コウがやって来て目の前で正気を保てない程の地獄を作り出すらしい。恐ろしいので何度も復唱する。
いざ歩を進める俺と俺の妹。狂気が全身に纏わりつくようだ。もう引き返す事は出来ない。やがて約束の三段目がやってくるが、何を勘違いしたか俺は『い、の、き』と叫んでしまう。寝る前にプロレスリング・ノアの生中継を観ていた所為か。恐ろしい柴咲コウがやってくる!「あ〜ぁ」と言わんばかりの眼で俺を見る妹。怖くて眼をつむったが
「眼つむっても無駄だから」
と誰かに耳元で囁かれたところでゾッとして起きた。相変わらず意味がわからない。